解放と放棄
感情がずっと迷子のままでいる。
嬉しいことも楽しいこともその時々の一瞬だけで、それが苦しい時のお守りになってはくれない。
穴の空いたコップのように、全て受けたまま流れていて、いつも何も満たされていない。
秋のように、苦しくて苦しくて仕方なくて、感情が暴れて涙が止まらないことはもうない。
いい意味で整理された気になっていた。でも本当は違ったのかもしれない。私はあの日から感情やそれに関わる全てから目を背け続けていた。何もかも考えることをやめていた。
だから、嬉しいことでさえ嬉しいと感じられなくなった。どんなに美味しいご飯を食べても美味しいと感じられなくなった。素敵な絵を見ても心が動かされることがなくなった。大好きな服を見ても欲しいと思わなくなった。
苦しみからの解放は、幸せを手放すことでもあったのだ。
戻るには目を向けなくてはならない、全てに。それがどれだけ怖くて面倒くさくて苦しいことか、想像しなくてもわかる。でもいつまでもこんな状態でいることはできない。
どうしたら乗り越えられるだろうか。一人では到底できそうにない。心のエネルギーがずっと欠乏しているのに、日々は繰り返される。日々を過ごすのに精一杯で、感情の回復にまで手が届かない。ずっと迷子だ。